日本文理大学

歌人・田中章義氏の講義を開催 その

(2012/12/13)

 12月10日、11日本学で、歌人で、TBS系朝のテレビ番組「朝ズバッ!」等のコメンテーターとしても活躍中の田中章義氏が女子学生、留学生、大学生を対象に夫々講義を行いました。田中氏は大学1年のとき、第36回角川短歌賞を受賞、ご卒業後は「地球版・奥の細道」づくりをめざし最終的には南極、北極大陸を含め、全世界200ヶ国の国々を全て巡り歌を詠む活動をライフワークとされています。その他作詞、単行本、ドラマ脚本、絵本の執筆等も手がけられ2001年には国連WAFUNIF親善大使に就任される等多方面で活躍されています。

  

  正課外教育の中で、女子力アップ講座と題し、様々な取り組みを行っていますが。10日は「絵本で心のリセット」と題して講義が行われ、田中氏が地球版奥の細道をつくってみようと思い立ち、世界中を旅した中で実感できた世界的規模での自然環境の危機と子供たちが置かれている過酷な現実が紹介され、聴講した女学生たちにとって、これらの課題とどう向い、自分たちでも貢献していけるのか、絵本を通して考えさせられる貴重な機会となりました。

 講義の中で世界の子供たちの実に20人に1人が、路上生活を送らざるを得ないという実態を目の当たりにし、インドのある村で実際に出会った幼い兄弟をモチーフにした絵本の紹介がありました。1日に40名もの子供たちが、紛争等を避けるためヒマラヤ山脈を2ヶ月かけて越えて逃げてくるというその村には、6才になる男の子がいて泣きながら、しきりに何かを訴えようとしていたそうです。聞いてみると、両親の生存さえ定かでなく、たった一人になった肉親の兄と、この村に逃げ込んできたが、2ヶ月に及ぶ過酷な逃避行のため、二人で村にたどり着いたものの兄は倒れ病院に収容されてしまったと言い、9才の兄は自分を助けるために食べ物も碌にとらないでいたため、病院に収容されてしまった。このまま死んでしまったら一人ぼっちになってしまう。「お願いだから僕を一人にしないで。」と訴えていたそうです。

 田中氏は、世界中に満ち溢れている自分の年齢、名前さえもわからない子供たちのこの声なき声、このような境遇の中で生き抜かざるをえない子供たちの心の底からの叫びを、絵本にして、路上生活者や難民となっている子供たちの現状を日本の人々に伝えようと思ったことが絵本を書くきっかけとなったと自身の体験を話されました。

  

 絵本は、いにしえからの教訓や敬意、親に対する感謝の気持ち等が土台となって纏められており、私たちが幼い頃から継承すべき叡智がたくさん詰まっています。NBU人間力育成センターには、絵本が常設されており、声を出して読んでみたり、読み聞かせ行うなど、それらの行為による気付き、これまでの自身の心の変遷を振り返る等の取り組みも行われています。絵本で心のリセットを行い、他の人のために自分ができることを考る。この大切な営みを今回の講義を通じて改めて認識できたようです。今回話を聞いてくれた人の中から、世界中の困難な境遇に置かれている人々のため、何にかできることはないかと考え、始められる事をひとつでもつくってもらえたら、ありがたいと思います。

 次に韓国の留学生を対象に、日本人が長きに渡って心情、思いを伝える手段として使われ、継承されてきた伝統文化の奥深さを実際に短歌を詠んでみることで体験してもらいました。

 

 田中氏は、ほんの一瞬の小さな気持ちの変化、心の動きに向き合った時写真一枚を撮るつもりで、取り上げた心情を日本人は1400年以上短歌として詠い、継承してきたことを紹介され、数多く短歌を作ることで、頭の中に創作の道筋が出来て行き、生活をしていく過程で五七五七七を詠んでほしいと語り、実際に短歌を作る事を勧められました。 短い時間の中でしたが、韓国にも固有の定型詩「シジョ(時調)」があり、聴講した韓国からの留学生の皆さんは、文の形だけにとどまらず、感性を磨くことの大切さを今回の講義で学ぶことができたようです。以下は留学生の皆さんが作った短歌の一部です。

「おおいたで 私が見つけた いいところ 人は情持ち 小さな幸せ」 :大分に来て、人々のやさしさにふれられたのでしょう。ほんのりした幸福感が漂っている・・そんな感じの歌です。

「おおいたで 私が見つけた いいところ 新しいふるさと 正におおざい※」※おおざい:大学の所在地名第二のふるさとが、大分の大在(おおざい)であると読んでいます。きっと心から落ち着けるところだったのでしょう。上記2作は田中氏が練習のため上の句を作られ、それに続けて留学生たちが下の句を作ってくれました。

「はちがつの おおさかのくうき あたらしい であいと食べ物 さすがおおさか」:夏休みに大阪に行った折、自分が住んでいる大分とはまた違った雰囲気、人々との出会いを素直に表現しています。

「私から 自分自身を 愛したら 今の私は 輝いている」:講義の中でも、短歌が相聞の歌(恋愛歌が多い)として使われたお話がありましたが、今の自分自身への気持ちを一言で表しています。

「ドアをあけた 一番目立つ ところから わたしをよんでる クリスマスケーキ」:お国で、家族とともにクリスマスケーキを買って過ごされている光景が浮かびます。今の季節にぴったりの歌ですね。

 留学生の皆さんにはこれを機会に、ますます興味を持って日本の伝統、文化に親しんでもらえることと期待しています。

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